蛇喰山の崩落跡など

取材当日は雨が降っていたこともあり、蛇喰山の崩落跡では、大きく左右に割れた熔岩流の断面が生々しく映った。それは引き裂かれた身体のようであり、今回のテーマと なっているミズハノメを産んだ、イザナミの体内を覗くようでもあった。崩落跡付近には黒曜石や炭を始め、比較的大きい様々な色の石が転がっており、身体に住む様々な種類の細菌に思えた。 Cliff Edge Projectで受けた環境カウンセラーの塩谷和広さんによるレクチャーで、溶岩は多孔質であるため、水分を多く含み苔がよく育つというお話を伺って以来、苔が豊かな水を示す存在として気になるようになった。椎の巨木には厚みのある苔が随所に見られ、曲がりくねった幹や枝、根が、長年にわたる生命の営みを感じさせた。また近くの杉は樹皮全面が緑青色の苔に覆われ、地面には丸い形をした、生まれて間もない様子の苔が随所に見られた。 次回は火口付近の、多孔質な溶岩を覆いつくす苔の群生を取材したい。

バレエの先生への取材

バレエの先生への取材では、「学校で何かあった生徒さんは、何も言わなくても身体が固くなっているので分かる」という、心と身体の関係を如実に表すエピソードが聞かれ、とても興味深かった。またバレリーナという職業柄、骨盤底筋という子宮に近いところにある筋肉をよく使うためか、妊娠による身体の変化に対して大変敏感であるのが印象的だった。それは流産の時も同様で、鍛え抜かれた身体と直観は、「落っこちちゃいそう」と、それを予感していた。流産後の気持ちの変化についても詳細に語っていただき、妊娠や出産がいかに奇跡か、状況は異なるにせよ、私自身の気持ちを代弁してくれたように思った。 今回、同じくバレリーナであり、フランスへの留学を目前に控えた娘さんに、先生が振付けをした「水の戯れ」と「月の光」を踊っていただいた。踊り終わって「いいでしょう」と優しく声をかける先生の声に、母と娘の特別な繋がりを感じた。するための環境づくりについて考えるきっかけとなった。

友人およびクリニックの取材

友人およびクリニックの取材では、採卵後の卵子や、さまざまなグレードの受精卵、凍結されている胚盤胞の様子などを見せていただいた。これまでは自身の流産経験に基づき、流産を含む「出産」がいかに奇跡かということに意識が向いていたが、妊娠するよりさらに前の「卵子」という存在に触れたことで、作品全体としての幅が広がっただけでなく、より核心的な要素が加わったと感じる。また看護師さん達
へのインタビューでは、心と身体の関係や、そのケアの大切さ、不妊治療を行う上で欠かせないパートナーや社会からの理解、さらには医療費などについて伺い、性別や社会といった構造上のズレや格差がもたらす影響や、女性が安心して「妊娠」するための環境づくりについて考えるきっかけとなった。