蛇喰山の崩落跡など

取材当日は雨が降っていたこともあり、蛇喰山の崩落跡では、大きく左右に割れた熔岩流の断面が生々しく映った。それは引き裂かれた身体のようであり、今回のテーマと なっているミズハノメを産んだ、イザナミの体内を覗くようでもあった。崩落跡付近には黒曜石や炭を始め、比較的大きい様々な色の石が転がっており、身体に住む様々な種類の細菌に思えた。 Cliff Edge Projectで受けた環境カウンセラーの塩谷和広さんによるレクチャーで、溶岩は多孔質であるため、水分を多く含み苔がよく育つというお話を伺って以来、苔が豊かな水を示す存在として気になるようになった。椎の巨木には厚みのある苔が随所に見られ、曲がりくねった幹や枝、根が、長年にわたる生命の営みを感じさせた。また近くの杉は樹皮全面が緑青色の苔に覆われ、地面には丸い形をした、生まれて間もない様子の苔が随所に見られた。 次回は火口付近の、多孔質な溶岩を覆いつくす苔の群生を取材したい。

早朝から雨

この日は早朝から雨。霧を霧が出ることも期待しながら出かけたが、思いのほか雨が強く、霧というより雨撮影になった。 山の中でありながら開けた砂防ダムと崩落跡のスケールから崩落当時の濁流の激しさを容易に想像できる。実際に雨の中だったこともあり、降り続く雨の音に恐怖も感じる。 砂防ダム上流に流れる小さな流れは長靴で渡れるほどの浅さ。まだ穏やかに降った雨が集まっていく様子はとても穏やか。そこでしばらくのあいだ雨の小川の影。 サワガニを見つけ川上に進むと、川の中に一つの骨を見つけた。鹿かイノシシのものと思われる。姿を見せずともどこかから山の動物がこちらの様子をうかがっているようで、こちらが訪問者であることを感じる。 場所を変えていくうち、ざっと降った雨が落ち着くと時折遠目に霧が出始めた。 天城の雨が染み込むような山の音が以前屋久島で感じたものと似ているように感じた。 もう少し雨を撮影してみようと思う。

貴僧坊水神社のわさび田にて

貴僧坊の水神社と境内のわさび田を訪れました。暑い日の最中、わさび田では地元の方々が山葵を収穫しておられました。神社から湧く冷たい水で山葵が育まれ、その収益で神社を維持されていることを初めて知りました。
自然の循環の中に人々の生活があり、水、山葵はそんな循環の中で育まれている恵み。
また過去の台風で起こった土砂崩れの痕跡を目の当たりにし、恵みとは反対の自然のもたらす厳しさを知ることもできました。
祭儀で雅楽を奉仕するにあたり、貴僧坊の豊穣と平穏を祈り演奏に望みたいと思っております。