Cliff Edge Project

水のかたりべ

「あの夜は、月が煌々と輝いていた。
そんな風景を打ち壊すように狩野川の上流から流れ込んできた鉄砲水。嵩を増す泥水。叫ぶ家族の声。流される家々。そんな風景を私は、集落の小高い場所にある自宅の前から眺めていた。

一瞬、何が起こったかわからなかった。やがてそれが、先ほどまで猛威を振るって通過していった台風22号のもたらした大雨によるものだとわかった。」

60年前の昭和33年9月26日から27日にかけて、日本列島を襲った台風22号は、下田沖から神奈川県に上陸し、伊豆半島では、天城を水源とする狩野川の流域地帯に甚大な被害をもたらしました。この台風は、狩野川台風と名付けられ、その豪雨によって、狩野川上流の山地一帯に、鉄砲水や土石流を発生させ、巨大な洪水となりました。
この洪水により狩野川の屈曲部の堤防が切れ、広範囲に浸水が生じました。
また、川にかかる橋梁には大量の流木が堆積し、巨大な湖を作った後に「ダム崩壊現象」を起こし、さらに大規模な洪水流となって下流を襲ったのです。

被害が最も大きかった修善寺町熊坂地区。多くの人々がこの濁流に流されていく中で自分が助かったことにジレンマを抱えてその後の人生を送ってきたひとりの男がいます。
「狩野川台風については、何度もその悲惨さを耳にしてきた。一滴の水にぬれることもない自分には、それに共感をもって話に加わることなどできなかった。またつらい思いをされた方の中には、黙り込む方も多い。60年の節目を迎えるにあたり、その悲惨を語るだけではない台風の伝え方ができないか。そんなことを考えてきた。」
彼が抱いた思いは、災害史をテーマとしたアートプロジェクトとの出会いによってここに実現しようとしています。

この展覧会は、狩野川台風体験者のインタビュー映像や今回の展示のためにデジタル化された台風被害の記録写真などの資料をもとに狩野川台風を新しい視点で捉えるものです。まさに今、歴史に埋もれつつある台風の足跡をこの展示で明らかにし、新たな災害史の1ページとして刻むことができれば幸いです。

Cliff Edge Project|水のかたりべ

期  間|2018年11月 12 日[ 月] – 11月23日[金・祝] 10:00 - 16:00
会期中無休・入場料無料
会  場|狩野川資料館 静岡県伊豆の国市墹之上467-2

主  催|Cliff Edge Project 
後  援|美しい伊豆創造センター、伊豆市教育委員会、伊豆の国市教育委員会、伊豆半島ジオパーク推進協議会 
協  賛|株式会社前田建設、野縁ファンドのみなさん
協  力|伊豆経済新聞、国土交通省中部地方整備局沼津河川国道事務所、伸東測量設計株式会社、伊豆市立熊坂小学校
企  画|Cliff Edge Project 
写真資料提供|国土交通省中部地方整備局沼津河川国道事務所狩野川資料館
映像制作|磯村拓也、鈴木雄介、住康平
音  楽|鈴木彩
出  演|石井英樹、小暮一夫、松本圭司

関連企画1

写真展「台風と秩序」

会  期|2018年10月17日[ 水] - 11月3日[土] 18:00 - 23:00 定休日/日・月・火
会  場|スタジオ35分 東京都中野区上高田5-47-8 WEBSITE
企  画|若山満大(アーツ前橋学芸員)
参加作家|上竹真菜美 百頭たけし 狩野川台風記録写真

関連企画2

トークイベント「アートが災害史をアップデートする」

開催日|2018年11月17日[土]13:30 - 15:30
会  場|狩野川資料館(参加無料)
定  員|30名
第1部 講演会「台風を撮った写真はなぜ存在しないのか」
    講師:若山満大
第2部 パネルディスカッション
    司会:平野雅彦(静岡大学教育学部特任教授)
パネリスト|住康平(Cliff Edge Project)、松本圭司(狩野川台風体験者)、若山満大

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アクセス

伊豆箱根鉄道伊豆長岡駅より徒歩 約20分(タクシー利用をお勧めします)
東名高速道路沼津ICより自動車 約30分
〒410-2204 静岡県伊豆の国市墹之上467-2 国土交通省沼津河川国道事務所伊豆長岡出張所構内狩野川資料館
※構内駐車場あり

本企画へのお問い合わせ cliffedgeproject@gmail.com